ファシリテートGの「まつ」です。
前回の「かわうち」の記事でも解説している通り、プロジェクトマネジメントの世界では、あらゆる業界でも利用できる汎用的な内容となっているため、プロジェクトに適用するためにはテーラリングが必要というお話をさせていただきました。今回は、PMBOKにおける各パフォーマンス領域のテーラリングのポイントを解説します。
各パフォーマンス領域のテーラリング
PMBOKでは各パフォーマンス領域のテーラリングのポイントについて次のように解説しています。
1. ステークホルダー:
サプライヤーとの協働的な環境はあるのか
組織の内部にいるか、外部にいるか、あるいはその両方か
コミュニケーションに適切でコスト効率に優れている技術はどれか
どのようなコミュニケーション技術が利用できるのか
言語はひとつか、多様な言語のステークホルダーに対応するための配慮がされているか
何人いるか、ステークホルダー・コミュニティ内の文化はどの程度多様か、コミュニティ内の関係はどのようなものか
2. プロジェクトチーム:
チーム・メンバーの物理的な所在地はどこか
チームは多様な視点や文化的観点を考慮しているか
チーム・メンバーをどのように特定しているか
チームは確立した文化を持っているか
チーム育成はどのようにマネジメントされるか
特別なニーズを持つチーム・メンバーはいるか、チームには多様性をマネジメントするための特別なトレーニングが必要か
3. 開発アプローチとライフサイクル:
プロダクト、サービス、または所産に適した開発アプローチはどれか。適応型の場合、プロジェクトは漸進的に開発すべきか、反復的に開発すべきか、ハイブリッド・アプローチが最良か
このプロジェクトの適したライフサイクルはどれか。どのようなフェーズで構成すべきか
組織には、正式または略式の監査およびガバナンスの方針、手続き、ガイドラインがあるか
4. 計画:
内部および外部の環境要因は、プロジェクトと成果物にどのような影響を与える可能性があるか
所要期間に影響を与える要因は何か
組織には、見積と予算化に関連する方針、手続き、ガイドラインがあるか
適応型アプローチを使用する場合、組織はどのようにコストを見積もるか
主要な調達は1回なのか、それともさまざまな納入者がさまざまな時点で関わる複数の調達が存在して調達プロセスがより複雑になるか
調達活動に関する現地の法規制は、組織の調達方針に統合されているか、これは契約お監査要求事項にどのように影響するのか
5. プロジェクト作業:
組織の文化、複雑さ、その他のプロジェクトの要因に基づく、最も効果的なマネジメント・プロセスは何か
協働的な作業環境を育むために、知識はプロジェクトにおいて、どのようにマネジメントされるのか
過去の情報や教訓は将来のプロジェクトに利用できるのか
組織には、プロジェクト・チームが使用する必要があり、容易に利用できる正式な知識マネジメント・リポジトリがあるか
6. デリバリー
組織には、要求事項マネジメント・システムがあるか
組織には、妥当性確認およびコントロール関連の方針、手続き、ガイドラインが備わっているか
組織には、どのように品質の方針と手続きがあるか。組織では、どのような品質に関するツール、技法、テンプレートを使用しているのか
業界では適用する必要がある特定の品質基準があるのか。考慮する必要がある行政上、法的、または規制上の制約があるのか。
要求事項が不安定なプロジェクト領域があるのか。それがある場合、不安定な要求事項に対処するための最善の方法は何か
プロジェクトマネジメントまたはプロダクト開発の要素には、持続可能性はどのように考慮されるか
7. 不確かさ
リスク選好とリスク許容度はどうか
選択した開発アプローチでは、脅威と好機をどのように特定し、対処するのが最適か
プロジェクトの複雑さ、技術上の不確かさ、プロダクトの新規性、ケイデンス、進捗状況の追跡は、どのような影響を与えるのか
予算、所要時間、スコープ、チームの大きさの観点でのプロジェクトの規模によって、さらに詳細なリスク・マネジメントの手法が必要となるか。あるいは簡易なリスク・マネジメント・プロセスのみで対応できるほどプロジェクトは小規模であるか
高度な技術革新、新技術、商業的取り決め、インターフェイス、またはその他の外部依存関係によって、堅牢なリスク・マネジメントの取り組みが求められているか。簡易なリスク・マネジメント・プロセスで十分に対応できるほどプロジェクトは単純であるか
プロジェクトは戦略的にどれだけ重要であるか。ブレークスルーの機会を創出することを目指したり、組織の業績への大きな障害に対処したり、主要なプロダクト革新をもたらしたりすることによって、リスク・レベルは高まっているか
8. 測定
価値はどのように測定するか
財務的価値と非財務的価値の尺度はあるか
プロジェクトの実施中およびプロジェクトの完了後に、ベネフィット実現に関連するデータ収集とレポート作成をどのように実現するか
プロジェクト状況報告への要求事項は何か
テーラリングの診断:
プロジェクトがうまくいっているのか判断するためには、振り返りの実施や課題、脅威、品質保証の統計データ、ステークホルダーからのフィードバックなどを参考にして、さらなるテーラリングの適応が必要か判する必要があります。
終わりに: ステークホルダーの業界や業種、習慣や文化に合わせテーラリングを行うことは決して簡単なことではありません。最適解を導き出す数式がある訳ではないため、ステークホルダーと一体となって作り上げていく必要があります。そのためにはプロジェクトの評価や振り返りを通してプロジェクトの推進を阻害する要因を見つけだし、継続的に改善をしていくことがプロジェクトを成功に導くことに繋がるのではないでしょうか。
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