top of page

プロジェクトのリスク・マネジメント

のり

今回は、以前お伝えしたPMBOKガイド第7版の「不確かさパフォーマンス領域」に含まれるプロジェクトのリスク・マネジメントについてお送りします。

プロジェクトのリスクとは、あるプロジェクトに損失が発生する確率とその損失の影響度を

組み合わせたものです。

そして、リスク・マネジメントとは、プロジェクトが潜在的に抱えていたり、今後発生する

可能性のあるリスクを洗い出し、対策を講ずることです。


1.リスク・マネジメントの流れ

  リスク・マネジメントはプロジェクト開始時に一度実施すれば終了ではなく、

  プロジェクトを通して、新規リスクの出現や既知リスクの非リスク化を監視する

  必要があります。

  リスク・マネジメントの大まかな流れは以下になります。

No.

作業タイトル

作業内容

リスクの特定

最も不確実なことが多いプロジェクトの計画段階において、プロジェクトで発生する可能性のあるリスクを洗い出し、プロジェクトへの影響有無を見極めるプロセスです。

このプロセスでは、プロジェクトにとって不利益となるマイナスのリスクだけでなく、利益となるプラスのリスクについても洗い出し、リスク管理簿へ登録します。

リスクの分析

リスクの特定プロセスで洗い出したリスクを対象に優先順位を付けるため、以下の2種類の方法でリスクを分析するプロセスです。

・ 定性分析

  リスクの発生確率他を数値化せず、特性を基に   分析します。

・ 定量分析

  リスクに優先順位を付けるために、リスクの

  発生確率と影響度を算定し、プロジェクト目標にも   たらす影響を分析します。

  ベータ分布や三角分布という分布モデルが

  多用されています。

リスク対応策の計画

リスクにどう対応するのかを決めるプロセスです。

詳細は「2.リスク対応策の詳細」をご覧ください。

リスク対応策の実行

リスク対応策の計画で策定した合意済みのリスク対応策を実行するプロセスです。

リスクの監視

本プロセスは、プロジェクト期間全体にわたって継続的に実行されるべきもので、新たなリスクの発生や変化を監視します。

新たに発見されたリスクに対してもリスク分析からリスク対応策の計画を実施します。

発生確率が0%になったリスクを発見した際も、リスク管理簿を更新します。


2.リスク対応策の詳細

  リスク対応策はマイナスのリスク、プラスのリスクそれぞれにあります(一部共通の

  対応策あり)。

リスク種別

リスク対応策

内容

マイナスのリスク

エスカレーション

リスクがプロジェクトの外部にあるか、またはリスク対応策の内容がプロジェクトに与えられた権限を超えている場合、この対策を選択します。 例:上層部へ報告し判断を仰ぐ。

マイナスのリスク

回避

リスクが発生しないように、プロジェクト計画を変更します。 例:個人情報を保有することは高リスクであるため、保有しないようにする。

マイナスのリスク

転嫁

リスクとその結果を第三者に移転させます。保険契約や外注契約により、リスクに関する責任を引き受けてもらうことなどが該当します。 例:保険に入り、リスクが顕在化した際の損失を補填してもらう。

マイナスのリスク

軽減

リスクの発生確率または影響度、あるいはその両方を受容可能な限界値まで減らします。 例:地震が多い地域であれば、地震対策を行い、リスクが顕在化した際の損失を軽くする。

マイナスのリスク

受容

リスクの発生自体を受け入れます。受容には以下の2種類があります。

- 積極的受容(事前対応)

  リスクが発生した際にどう対応するかを   コンティンジェンシー計画として作成   しておきます。

- 消極的受容(事後対応)

  リスクが発生した段階で対応策を検討   します。

プラスのリスク

エスカレーション

マイナスのリスクと同様です。

プラスのリスク

活用

積極的な計画によってリスクの不確実性を減らし、プラスのリスクの実現確率を高めてその結果を利用します。 例:品質改善や生産性向上に取り組む。

プラスのリスク

強化

リスクの要因を識別し、その原因を強化する方策を採ってプラスのリスクの発生確率を高めます。 例:スケジュールを前倒しすると全体のコストを下げられる場合、作業を並行実施することで期間を短縮する。

プラスのリスク

共有

プラスのリスクを捉えるために、能力のあるパートナーを見つけて共同活動します。 例:営業が自分の部署が専門外の案件を取ってきた場合でも、他の適切な部署へ斡旋する。

プラスのリスク

受容

マイナスのリスクと同様です。


3.所感

 ● リスクとは、ざっくり言いますと「将来損する危険性」を意味しており、

   言葉の意味そのものにマイナスイメージを持っていました。

   ですのでプラスのリスクという言葉を見た際に、言葉としておかしくないか?

   と思ってしまいました。ただ、調べてみると物事が計画通りに進まない可能性

   という意味も持っており、であれば確かに、思わず得をするというのも

   (プラスの)リスクと言えるなと納得しました。

 ● リスクの定量分析について、結構な規模のプロジェクトであっても、これまでに

   実施しているのを見たことがありません。

   莫大な予算で厳密にスケジュール管理するプロジェクトであれば、

   特性(定性)ではなく、数値(定量)でのリスク分析が必要だと思われますが、最低でも

   定性分析を実施しておけば大丈夫のように思えます。


リスク・マネジメントについての話題は以上となります。

最新記事

すべて表示

不確かさパフォーマンス領域

ファシリテートGの「のり」です。 今回は、PMBOK第7版のプロジェクト・パフォーマンス領域のうち、不確かさパフォーマンス領域の概要についてお話します。 PMBOKでは、例えば天気などの予測不可能なものを「不確かさ」と称します。...

Comments


bottom of page