ファシリテートGのかわうちです。
今回はPMBOKの「テーラリング」についてご紹介します。
概要
これまでPMBOKの8つのプロジェクト・パフォーマンス領域について紹介してきました。
PMBOKはプロジェクトマネージメント手法が体系的にまとめられています。
ただしそれは、建設からITまでさまざまな業界のプロジェクトに適用できるような汎用的なものであるため、実際のプロジェクトでは効率が悪くなったり、余計なプロセスがあったりとうまくいかない可能性があります。また以下の例のように、プロジェクトの状況によって導き出される結論が相反する場合もあります。
例:プロジェクトにおける "リスク対応の最適化" を検討
・リスク許容度が低いプロジェクトの場合
→細かなプロセスや手順の作成が求められる
・リスク許容度が高いプロジェクトの場合
→細かなプロセスや手順の作成はコストの増加につながるため不要
つまり「テーラリング」とはプロジェクトマネジメントのアプローチやプロセスをを自分たちの業界慣習やプロジェクトの内容に合わせて変えたり、取捨選択することで "最適化" させることを言います。
プロジェクトでは次のような競合する可能性がある要求事項があるため。これらのバランスを取りながら実務的な作業環境に落とし込むことが重要です。
・可能な限り迅速な納品
・コストの最小化
・高品質の成果物と成果の実現
・規制基準の順守
・多様なステークホルダーからの満足度
・変化への対応
テーラリング・プロセス
PMBOKではテーラリングの進め方について以下のように解説しています。
初期の開発アプローチの選定
組織に合わせたテーラリング
プロジェクトに合わせたテーラリング
継続的改善
1.初期の開発アプローチの選定
プロダクトや納品の頻度/サイクルなどから、予測型や適応型、ハイブリッド型などの最適な開発アプローチを選びます。選定時によく使われるツールのひとつが「適合性フィルター」です。これは、"文化""チーム""プロジェクト"の3つの要素について検討し、最終判断の材料にするものです。
各要素の詳細は以下になります。
・文化
→アプローチへの賛同とチームへの信頼を基盤として、支援を得られる文化があるか
・チーム
→メンバーは成功に必要な経験とビジネス担当者との繋がりを持っているか
・プロジェクト
→変更頻度は高いか。漸進的な納品は可能か。プロジェクトの重要度はどの程度か
上記要素について検討し、不確実性が高いということになれば、これまでのやり方が通用しない場合があるため適応型が望ましいと言えます。逆に確実性が高い場合は予測型が向いているでしょう。
2.組織に合わせたテーラリング
特に大きな組織では、その組織におけるプロジェクトマネジメント方法や開発アプローチの仕組みが定義されている可能性があるため、組織方針との整合性を取る必要があります。
3.プロジェクトに合わせたテーラリング
プロジェクトのテーラリングに影響を与えるものとしては、次の要素があります。
・プロダクトや成果物
→コンプライアンスの重大性、業界市場、技術、期間
・プロジェクトチーム
→チームの規模、地理的要因、チームの経験、顧客へのアクセス
・文化
→(ステークホルダーからの)賛同、信頼、組織の価値観
4.継続的改善
テーラリングはプロジェクト開始時に一度実施して終わりになるのではありません。例えばフェーズゲートでテーラリングの見直しを組み込むなど、プロセスの改善に積極的に取り組むことが高い品質の実現につながります。
終わりに
今回はテーラリングの必要性と作業プロセスについてご紹介しました。
次回は各パフォーマンス領域におけるテーラリングのポイントご紹介します。
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