top of page

生成AIを用いたシステム開発工程ごとの役割分担

  • 執筆者の写真: なゆ
    なゆ
  • 10月6日
  • 読了時間: 7分

アーキテクトGの「なゆ」です。


前回は「生成AIとの向き合い方」についてお話させていただき、開発現場としてもいかに組織として協働の仕組みを築けるかが鍵になるため、AIを活用しつつAIとの役割分担や作業範囲を明確化する必要があるとお話しました。


今回は、前回の記事を基に開発現場ではどのように生成AIを活用していくか工程ごとのAIの役割・作業範囲についてお届けしたいと思います。


各工程ごとの役割分担


各工程ごとに、作業概要、AIと人の役割分担、利用するAIなどを以下にまとめてみました。

製品については、よく利用されている製品を参考にしております。


要件定義

 

工程内での作業概要

業務要件の整理、機能要件の明確化、非機能要件の定義

役割と作業範囲 (AI)

類似事例の提示、要件の言語化支援、ヒアリング内容からの要約、要件間の矛盾指摘

役割と作業範囲 (人)

顧客との合意形成、ビジネス背景理解、優先順位の判断、要件の確定

利用する生成AI名(参考)

ChatGPT, Claude

要件定義工程では、ユーザーの業務フローや実装する機能・非機能要件を整理します。

業務フローや手順が既に存在する企業であれば、それを参照して要件を体系化できますが、ドキュメントが整備されていない場合も少なくありません。

そうしたケースでは、AIに一般的な業務フローを生成させ、ユーザーにヒアリングしながら実際の業務内容を具体化していく方法が有効です。これによりユーザー側もイメージしやすく、確認・修正がしやすくなります。

また、ヒアリング会議を録音してAIに要約させることで、担当者がメモや記録に追われずに議論へ集中できるというメリットもあります。ただし、AIの要約には誤りが含まれる可能性があるため、担当者が内容を確認して補正することが必要となります。



基本設計

 

工程内での作業概要

システム構成、機能設計、インターフェース定義

役割と作業範囲 (AI)

設計ドキュメントのドラフト作成、設計パターン例の提示、レビュー観点の提案

役割と作業範囲 (人)

設計方針決定、リスク考慮、セキュリティ要件適用、レビュー承認

利用する生成AI名(参考)

ChatGPT, Gemini

基本設計工程では、システム全体像や主要機能の設計をまとめます。

AIを活用することで、設計ドキュメントの初稿を自動生成したり、既存の設計パターンや類似システムの例を参照して提案することができます。これにより、設計作業の効率化や抜け漏れ防止に役立ちます。

一方で、AIの提案は一般化された内容が多く、セキュリティ要件、既存システムとの互換性などの制約事項には必ずしも適合しません。

そのため、AIが生成した設計書の「叩き台」を人が精査し、ビジネス要件や運用制約を踏まえて判断していくことが重要です。

詳細設計

 

工程内での作業概要

データ構造、アルゴリズム、画面仕様

役割と作業範囲 (AI)

サンプルコード生成、設計書ドラフト化、テスト観点の抽出

役割と作業範囲 (人)

実装可能性検証、最適化判断、顧客仕様反映

利用する生成AI名(参考)

GitHub Copilot, CodeWhisperer

詳細設計工程では、データ構造やアルゴリズム、画面仕様などを具体的に定義します。

AIを用いれば、データ定義書やクラス図、API仕様書のドラフトを効率的に作成でき、さらにサンプルコードを生成して設計の妥当性を検証することも可能です。

特に条件パターンの洗い出しなど、人が時間をかける必要がある項目についてはAIを利用して短期間でパターンのドラフト版を作成することが可能となります。

ただし、業務特有のロジックや複雑な非機能要件は、AIでは十分に表現しきれないことが多いです。そのため設計者がAI生成結果をレビューし、調整や最適化を加えることで、初めて実用的な設計へと昇華できます。



実装

 

工程内での作業概要

プログラム作成、単体テスト作成

役割と作業範囲 (AI)

コード補完、標準的な実装テンプレート生成、静的解析の自動実行

役割と作業範囲 (人)

コーディング規約適用、例外処理実装、最終レビュー、品質確保

利用する生成AI名(参考)

GitHub Copilot, Tabnine

実装工程では、AIによるコード補完やテンプレート生成が大きな効果を発揮します。GitHub CopilotのようなAIを活用することで、開発者の生産性を向上させることができます。また、AIによる静的解析や自動リファクタリング提案を利用すれば、品質向上にも寄与します。

ただし、AI生成コードは動作しますが正しいとは限らないため、業務要件に即した実装かどうかを人がレビューすることが必須です。特に例外処理やセキュリティ関連は担当者の知見でカバーすべき領域です。

特に大企業や開発規模が大きいシステムの場合、コンポーネント化して再利用可能な機能としてAIに読み込ませてその会社に合ったコードを醸成していく必要があります。



テスト

 

工程内での作業概要

単体・結合・システムテスト

役割と作業範囲 (AI)

テストケース自動生成、異常系シナリオ提案、テストデータ生成

役割と作業範囲 (人)

テスト結果評価、顧客シナリオ反映、品質判断

利用する生成AI名(参考)

ChatGPT, TestGPT

テスト工程では、AIによるテストケース自動生成や異常系シナリオの提案が有効です。

これにより網羅性の向上や準備工数の削減が期待できます。また、テストデータをAIで生成すれば、従来より効率的な検証が可能になります。

一方で、AIが生成したテストケースは実際の業務シナリオを十分に反映していない場合があります。

そのため、業務部門やQA担当者が最終的にシナリオを確認し、業務観点からの妥当性を補強する必要があります。



運用・保守

 

工程内での作業概要

障害対応、ログ解析、改善提案

役割と作業範囲 (AI)

ログ解析補助、FAQ自動応答、改善案のドラフト

役割と作業範囲 (人)

障害対応の判断、顧客調整、最終的な改善策決定

利用する生成AI名(参考)

ChatGPT, Elastic AI Assistant

運用・保守工程では、AIはログ解析や障害予兆検知、FAQ応答の自動化に強みを持ちます。これにより、一次対応のスピードを高め、担当者の負担を軽減できます。

しかし、重大障害や顧客影響の判断はAIには任せられません。AIの検出結果を参考にしながら、最終判断や顧客との調整は人間が担う必要があります。



プロジェクトマネジメント

 

工程内での作業概要

進捗管理、課題・QA管理、品質管理

役割と作業範囲 (AI)

WBS作成支援、進捗レポート自動生成、課題・QAの自動要約と優先度提案、リスク兆候検知(コミュニケーションログ解析など)

役割と作業範囲 (人)

計画承認、進捗遅延の対策決定、課題解決の調整、品質保証と顧客報告

利用する生成AI名(参考)

ChatGPT, Notion AI, Microsoft Copilot

プロジェクトマネジメントでは、AIを活用することでWBSの自動生成、進捗レポート作成、課題・QAの自動要約や優先度提案が可能です。

これにより、定型的な管理作業を効率化し、マネージャーは意思決定に集中できます。

一方で、AIの進捗レポートは数字上は正しいこともありますが、現場の状況を反映していないケースもあります。そのため、現場との対話を通じて状況を補足し、AIのアウトプットを参考情報として扱いつつ報告内容を精査することが必要となります。




各工程を俯瞰してみると、現時点では工程ごとの役割分担を見ていくと、AIは「ドラフト版生成」「補助」「チェック」に強みを持つため、そういった役割を持たせることで業務の効率化を図ることができると考えます。

一方、人は「意思決定」「品質保証」「合意形成」において不可欠な役割を担います。AIを"エンジニア兼レビュアー”として位置付け、担当者がアーキテクトや品質責任者としてリードするのが現実的かつ有効な形と考えます。



おわりに


いかがでしたでしょうか。

生成AIは開発の効率化を支える強力なツールですが、現時点ではあくまで「補助者」に過ぎません。重要なのは、AIと人の役割を明確化した上で、開発プロセスそのものを再設計することです。この視点を持つことで、組織全体の生産性向上と品質向上を両立させることができると考えるます。 またAIは学習させる必要がありますので、新入社員教育のようにAIを学習させて、業務プロセスに組み込めるように利用してみてはいかがでしょうか。

コメント


bottom of page